まくら

読んだ本や好きな文章の感想

上野千鶴子・小倉千加子・富岡多惠子『男流文学論』(2)――吉行淳之介『砂の上の植物群』

(1)はこちら。 吉行淳之介『砂の上の植物群』を読みました。 吉行淳之介の小説を読んだのはこれが初めてです。 砂の上の植物群(新潮文庫)【電子書籍】[ 吉行淳之介 ]価格: 539 円楽天で詳細を見る 『砂の上の植物群』では、亡き父の影に囚われている三十七…

久保帯人『BLEACH』 マジ、愛・・・・・・・・

BLEACH ❤️BIG LOVE❤️ 卓越した言語感覚 巻頭ポエム 詠唱・解号・斬魄刀 セリフ 卓越した言語感覚 BLEACH、作者の言語感覚が本当に漫画界で頭一つ抜けてると思う。特に少年心をくすぐるカッコよさという点では頂点にいるんじゃなかろうか。 獄頣鳴鳴篇に触発…

大学入試

今週のお題「試験の思い出」 私の人生で一番デカかった試験は大学入試ですね。 センター試験 友達が数学の難しさにパニックになった結果、数ⅡBじゃなくて数Ⅱを解答して、試験後の登校日に先生にめっちゃ怒られてました。 私が通ってた高校は全員ⅠA・ⅡBを受け…

上野千鶴子・小倉千加子・富岡多惠子『男流文学論』(1)――村上春樹『ノルウェイの森』

『男流文学論』、めちゃくちゃおもしろ大当たり本でした。 著名で評価も高い男性作家の文学作品に対するフェミニズム批評です。上野千鶴子(社会学者)・小倉千加子(心理学者)・富岡多惠子(作家・詩人)による鼎談形式ですね。歯に衣着せぬ物言いが痛快でキモチ…

(歌集)小佐野彈『メタリック』 よかった…………

小佐野彈の歌集を初めて読みました 真夜中に読んでグチャグチャに心が打ちのめされた オープンリーゲイの方だそうですが、同性愛を扱った歌が特に好きですね……… メタリック 作者:小佐野 彈 短歌研究社 Amazon 家々を追はれ抱きあふ赤鬼と青鬼だつたわれらふ…

ジャルジャルの腹パンネタがYouTubeで好きなときに好きなだけ見られる時代に生まれてよかった

ジャルジャルの理不尽暴力からしか得られないものってありますよね。 YouTubeとジャルジャルが同時に存在する時代に生きられて感謝です。 「腹殴る奴」 「腹殴るスケジュール立ててる奴」 「腹殴るスケジュール立ててる奴」【朝メシ食う奴】 「興奮してるキ…

染野太郎『人魚』(歌集)

twitterで見かけた染野太郎さんの歌に萌え散らかしたので歌集を買いました。 歌集 人魚 (まひる野叢書) 作者:染野 太朗 KADOKAWA Amazon 感情がなければいいなひとりだな便器掴んで吐くこの朝も これがその短歌なんですが も……萌え~~~~~~~;;;;;…

「ハンカチを噛む女」という概念について(+水城せとな『窮鼠はチーズの夢を見る』『俎上の鯉は二度跳ねる』読みました)

ちょっと昔の漫画とかで、「ハンカチを噛んで悔しがる女」って出てきますよね。 具体的にどの漫画で見たのかと言われると名前は挙げられないんですが…… 私は今日までそれはどこかの漫画の大家がやり始めた漫画特有の表現だと思ってたんですが、国木田独歩「…

最近読んだものや観たものの感想

もろもろ感想。ネタバレ注意 森鴎外『ヰタ・セクスアリス』(小説) 谷崎潤一郎『陰翳礼讃』(評論?) 河野多惠子『みいら採り猟奇譚』(小説) 富岡多恵子『波うつ土地』(小説) 田村由美『7SEEDS』(漫画) ジャルジャル単独ライブ「愛るしい、きみ」 久保帯人『BL…

村上龍『コインロッカー・ベイビーズ』読んだ

めちゃくちゃよかった。少なくとも2021年に読んだ小説の中で一番よかった。 新装版 コインロッカー・ベイビーズ (講談社文庫) 作者:村上 龍 講談社 Amazon 新装版 コインロッカー・ベイビーズ (講談社文庫) [ 村上 龍 ]価格: 1012 円楽天で詳細を見る なん…

新井英樹『RIN』とかいう最高傑作

今回は漫画の話をします。 新井英樹の『SUGAR』『RIN』というボクシング漫画、特に『RIN』のことがマジでマジでマジで好きで、これまで読んできた漫画の中で好きランキングトップ3に入るレベルなんですが、周りで読んでいる人がおらず人と語れないためここで…

労働で疲れてるときに吉野弘の詩読んだら泣いちゃった

タイトルの通りです。 労働で疲弊してるときに読む吉野弘の詩、めちゃくちゃ魂に染みる。 吉野弘詩集 (岩波文庫) 作者:吉野 弘 岩波書店 Amazon 今回読んだのはこれです。 もう序盤の「burst」と「挨拶」が本当にクる。 三十年。 永年勤続表彰式の席上。 雇…

メチャクチャ好きな短編 芥川龍之介「蜜柑」

芥川の「蜜柑」……めちゃくちゃ好きなんですよね~ 話の展開が鮮やかすぎる、これぞ「短編」のお手本って感じで…「起承転結」がすごくちゃんとしていると思います。 芥川の作品の中で好きなやつ三つ挙げろと言われたら、「地獄変」と「蜜柑」は入るかな…って…

(歌集) 木下龍也『きみを嫌いな奴はクズだよ』/工藤吉生『世界で一番すばらしい俺』/鈴木美紀子『風のアンダースタディ』

好きな歌や最近読んだ歌集について。 木下龍也『きみを嫌いなやつはクズだよ』 工藤吉生『世界で一番すばらしい俺』 鈴木美紀子『風のアンダースタディ』 --------- 木下龍也『きみを嫌いなやつはクズだよ』 [書籍のメール便同梱は2冊まで]/きみを嫌いな奴は…

最近読んだ本(太宰治『ヴィヨンの妻』・『京大変人講座』)

太宰治は『人間失格』「走れメロス」ぐらいしかちゃんと読んだことがなかったんですが、この前読んだ「猿ヶ島」が面白かったので短編集を買ってみました。 ヴィヨンの妻改版 (新潮文庫) [ 太宰治 ]価格: 407 円楽天で詳細を見る 率直に言うと、同族嫌悪み…

芥川龍之介「地獄変」:娘はなぜ焼かれたか

地獄変のこと愛してるのに、実はこれまでこの話の解釈を突き詰めて考えたことがなかったので考えてみた。 ただ、いくつか論文を読んでるうちに「これはガチでやると記事書くのに一月以上はかかるな!?!?」と感じ、そこまでは時間をかけたくないなと思った…

吉野弘「I was born」(+日記)

吉野弘の「I was born」、高校の現代文の教科書に頻繁に掲載されていますが、私が使っていた教科書にも載っていました。高校生のときに読んでからずっと好きです。 で、何が好きかって、今まではなんとなく蜻蛉と母の話がいいなあぐらいに思っていたんですが…

地獄変をすこれ

芥川龍之介の「地獄変」がめちゃくちゃ好きです。 なぜならエロいから。 これ、エロいよね…? エロいという言い方がふさわしくないのであれば、非常に官能的だよね? 燃やされながら身悶えする娘の描写は大変官能的ですよね。しかし特に私は「この上なく大切…

坂口安吾(1)「教祖の文学」

坂口安吾の文章、め〜〜〜〜〜〜っっっちゃ好み……。 新潮文庫の『堕落論』(評論集)、昔読んだときはウオ〜〜よくわかんねえ〜〜〜と思いながら義務感でバーッと読んだだけだった気がするけど、今改めて読んだらめちゃくちゃ面白い…… 文章がほんと簡潔。無駄…

藪内亮輔『海蛇と珊瑚』(歌集)

藪内亮輔さん、ツイッターの短歌botで見た歌がめちゃくちゃ好きだったので歌集を買いました。 ハードカバーで歌集を買うのは初めてなのですが、カバーは無駄な装飾が一切ないメタリックなグレー一色でカッコいいです。 ちなみに1ページに基本三首が収録され…

それを、ほんとうにわたしは見たのだったかしら――川上弘美『真鶴』

川上弘美の『真鶴』、ほんとうに好きです。 年に一回、冬の終わり、春のはじめ頃になると、読みたくなります。五回ほどは読んだと思いますが、何回読んでもよい。ストーリーも好きですが、それ以上に言葉の運び方選び方、作者のものの見方が好きなので、何度…

4/4追記「見たこともないような美しく冷酷なものに、からめとられる」アンナ・カヴァン『氷』

タイトルの「見たこともないような美しく冷酷なものに、からめとられる」というのは、川上弘美さんによる解説の中にある言葉なのですが……言い得て妙。文庫版『氷』の帯にも使われているのですが、ずばりこの作品の異様さ、麻痺するような美しさ、残酷さが言…

中村文則『掏摸』

生活していく中でいろんなことが終わってきたなと思ったら中村文則の本を読みます。たいてい私よりも終わっている人が出てくるので。 いや~~~……中村文則、めちゃくちゃ好きなんですよ。割と私の中で当たりはずれがあるので軒並み全部好きというわけではな…

三島由紀夫のなんかよくわからんけどエッチな気がする短編小説「花火」

初めてこれ読んだときは「なんだ…?よくわからんな……」と思ったんですが、読み終わってからしばらくして「あの小説ってなんか……エッチじゃなかった!?!?」となりました。 それでこの前改めて読んでみたんですが、「……?いや別にエッチではないわ……考えす…

腐っていく苺のショートケーキ 小川洋子「洋菓子屋の午後」

小川洋子の本がとても好きです。著作は全てではないですがいろいろ読んでて、短編の中で一番好きなのはこの「洋菓子屋の午後」。文庫本のページにしてわずか15ページ。短編小説って物足りなく感じることが多くてそこまで好んで読まないんですが、「洋菓子屋…

茂木健一郎『脳と仮想』読んだ

いつから置いてあるのか、自分がそれを読んだことがあるのかどうか、マジで何もわからないけどなんか気づいたらずっと本棚にある本ってありませんか? 私は『脳と仮想』がそれだったんですがこの前ようやく読んでみました。 「クオリア」という主体的に感覚…

かわいいだけのきみに殺人なんかできるわけがない――最果タヒ『星か獣になる季節』

今日はアイドルの動画を久々にじっくり見ていい気分なので、アイドルにまつわる本について。 星か獣になる季節 (ちくま文庫) 作者:最果 タヒ 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2018/02/07 メディア: 文庫 これ単行本でも読んだんですけど、紙媒体の小説で…

『雪国』の冒頭ぐらい有名になってほしい 夏目漱石『京に着ける夕』

とにかく「冒頭がハチャメチャにカッコいい!!!!!!!!!!!!!!」ってクソデカ大声で言いたい。 https://www.aozora.gr.jp/cards/000148/card777.html 汽車は流星の疾はやきに、二百里の春を貫つらぬいて、行くわれを七条しちじょうのプラットフォ…

憂鬱な香水に深く涵した剃刀 北原白秋「萩原朔太郎『月に吠える』序」

本が好きなので好きな本や好きな文章の感想を書きたい。本当は人と語り合いたいけど周辺で私の語りに付き合ってくれそうな人がいないので一人でブログに書くことにしました。 最初は萩原朔太郎「月に吠える」に寄せた、北原白秋の序文。 https://www.aozora.…

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