まくら

読んだ本や好きな文章の感想

宮本輝『星々の悲しみ』読んだ

以前読んだ『青が散る』がめちゃくちゃ面白かったので、それ以来宮本輝の作品をいくつか読んでいる。 今回は『星々の悲しみ』という短編集を読んだ。 星々の悲しみ (文春文庫) [ 宮本 輝 ]価格: 660 円楽天で詳細を見る 好きだったシーンはまず、表題作「…

木村紅美『夜の隅のアトリエ』と、北陸という土地

富山かな?と思ったら富山だった。 陰鬱陰鬱陰鬱な北陸の冬と雪がこれでもかと描写されていて、これだよこれと思った。 夜の隅のアトリエ 作者:木村 紅美 文藝春秋 Amazon 初めて読む作家だったが、感情の乏しい淡々とした文体が好みだった。 この描写が特に…

2024年度共通テスト国語の評論を好きに解説する

※ほぼ同じ内容の記事をnoteにも上げています 実は国語の文章問題(高校生向け)を作っていたことがある。せっかくなので作問者目線で共通テストを解説してみる。 全体的な感想 問1 問2 問題を解く際、どこまで読めばいいか 問3 誤答解説 問4 誤答解説 問5 問…

進撃の巨人のアニメを最終話まで完走しマジ泣きしたのちに一話から見直している

進撃の巨人のアニメを……今日、最終話まで観終わって……… あの……………… すごかった……………………………… 以下感想ですが、めちゃくちゃに重大なネタバレがあるので未読・未視聴の人は要注意 進撃の巨人(1) (週刊少年マガジンコミックス) 作者:諫山創 講談社 Amazon

新井英樹『真説 ザ・ワールド・イズ・マイン』の感想が書けない(24.3.3追記)

なんなんだろう………? この、漫画……………… なんだろう? なんだこれ? どうしたらいい? 誰か、わかる人はいますか? 真説 ザ・ワールド・イズ・マイン 1巻(1)【電子書籍】[ 新井 英樹 ]価格: 469 円楽天で詳細を見る 真説 ザ・ワールド・イズ・マイン 2巻(1…

編集職(紙)をしばらくやって思ったこと

紙の本、真面目系、基本著者なし(社内で執筆)の編集 兼 執筆 兼 校正校閲をしばらくやってみて思ったこと ・DTPオペレーターさん、マジでいつもありがとう ・校正、眠い ・編集職は必ずしも激務とは限らない。つくってる本の種類によっては連日定時で帰れ…

『マチネとソワレ』13巻読んでから谷崎潤一郎「春琴抄」読んだ

マチネとソワレの話は以前もした(下記リンク参照)が、13巻であった「春琴抄」の回が好きだったのでまた書く。 谷崎潤一郎「春琴抄」は青空文庫でも読めます。私は青空文庫ビューアのアプリで毎日空き時間にちょっとずつ読みました。短めなので結構すぐ読めま…

みんなにもっと気軽に純文学について早口語りしてほしい

特別お題「わたしがブログを書く理由」 私は近現代の純文学が好きだが、SNSを見ていると純文学読んでる人って私が思ってるより少ないんだなぁ……って思う。大学生のころ、近代文学の授業受けたあとに友達と大感動の爆萌語りしてたけど、あれは非常に限定され…

私じゃないけど私だった 川上未映子『すべて真夜中の恋人たち』

5年ぐらい前に初めて読んだときも「あ〜〜いい本だな〜」とは思ったんですけど、それからいろいろあって、転職して、首都圏にやってきて、すさまじい人混みに揉まれて、友達の結婚式に出て、「人生」をそろそろ真面目に考えるようになった今読んで「私だ」っ…

桜庭一樹『私の男』 どエロい。

近親相姦かくあるべし、というような本だった。私はこれ読むまで別に近親相姦ものは好きでも嫌いでもなかったし、読み終わった後でも好きでも嫌いでもないが、「父と娘の近親相姦なら『こう』じゃねえとな。」と思った。 もう序盤の「匂わせ」描写がほんと~…

「怪物」観てきたんだけど是枝裕和って天才?

「万引き家族」にずっと大感動し続けているので、かなりの期待を抱いて昨日「怪物」を観に行った。 以下、日記兼感想です。ネタバレあります。これを読むとストーリーがわかる、というほどではないですが、具体的な描写に対する言及(と私なりの解釈)がたく…

河野裕子・永田和宏『たとへば君 四十年の恋歌』

河野裕子と永田和宏は二人とも歌人で、夫婦。永田さんは生物学者でもある。二人は仲睦まじい夫婦だったが、河野さんは2010年に癌で亡くなった。という程度の知識(イメージ)でこの本を読んだ。 たとへば君 四十年の恋歌 (文春文庫) [ 河野 裕子 ]価格: 80…

村上春樹『一人称単数』読んだ

これまで読んできた村上春樹の短編集の中では一番好きだった。 長編は好きなのが多いんだけど、短篇はこれまであんまり好きなのに出会えていなかった。『レキシントンの幽霊』とか『回転木馬のデッド・ヒート』、『パン屋再襲撃』とかいろいろ読んだ気がする…

小野不由美の十二国記シリーズを『黄昏の岸 暁の天』まで読んだわけだけど

なにこれ……? ハチャメチャに、面白い…… 世界にはまだまだ面白い本がある。 私、最近まで(厳密にいえば2022年に「ファイアーエムブレム風花雪月」という神々が作りしゲームに出会うまで)ずっと「ファンタジー作品」というものに抵抗感を抱いていて、中学生…

『窮鼠はチーズの夢を見る』から教わった「恋」と「責任」、そして「同性とともに生きる」ということ

水城せとな『窮鼠はチーズの夢を見る』という漫画を会社の先輩から激しく薦められ、軽い気持ちで読み始めたらぶっ倒れた。 恋と性愛、人間関係と責任、そしてこの社会で「同性を選んで生きること」とはどういうことなのか。丁寧に誠実に、この本が教えてくれ…

宮本輝『青が散る』を読んで完全に「大学生」になった

人からもらった宮本輝の『青が散る』を読んだ。読む前はあんまり期待してなかったんだけど、読み終わってみたら「め……めちゃくちゃ面白かった~…………」って空を仰いで呆然とするぐらいに良い小説だった。 『青が散る』の舞台は1960年代、大阪。茨木市に新設さ…

「THE FIRST SLAM DUNK」観た

観た。 私の周りで観た人みんなめっちゃ良かった〜って言ってたし私は基本的に原作至上主義者なので私の中の期待値かなり上がってたんですが、それをきれいに超えてきてくれました。ありがとう。 以下、ネタバレへの配慮ありません。未視聴でこれから観る予…

大江健三郎『芽むしり仔撃ち』10年ぶりぐらいに読んだけどやっぱりキツイ

描写がめちゃくちゃ上手いからこそキツい本ってあるよね~ 芽むしり仔撃ち (新潮文庫 おー9-3 新潮文庫) [ 大江 健三郎 ]価格: 605 円楽天で詳細を見る 大江健三郎は『芽むしり仔撃ち』と『死者の奢り・飼育』ぐらいしかちゃんと読んだことはないんですが…

中村文則と又吉直樹――『何もかも憂鬱な夜に』『夜を乗り越える』

私は中村文則の『何もかも憂鬱な夜に』という小説を崇拝しているんですが、又吉直樹がその本の感想を『夜を乗り越える』って本の中で書いてて、それ読むと私が『何もかも憂鬱な夜に』読んで思ったことがほとんどそのまま書いてあった。私が書き添えること、…

今後感想書きたいものリスト(24/2/16更新)

自分のためのメモ書き兼、人に公開することでセルフ尻叩きします 思いついたときに更新

赤ちゃんはいつから「ばぶ」と言うようになったか:『吾輩は猫である』より

赤ちゃんの喃語を「ばぶ」「ばぶばぶ」みたいに表記するのって結構最近(早くても戦後とか)のことかと思ってたんですけど、夏目漱石『吾輩は猫である』(1905発表)読んでたら赤ちゃんが「ばぶ」と言うシーンがあって驚いた。 それで赤ちゃん言葉「ばぶ」はい…

(歌集)永田和宏『メビウスの地平』

「あの胸が岬のように遠かった」というフレーズが心に突き刺さって離れなかったので永田和宏の歌集を読みました。 『知の体力』とか『僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう』とかは軽く読んだことがあったんですが、歌集をちゃんと読んだのはこれが初めて…

島尾敏雄『死の棘』読んだ(『男流文学論』③)

『死の棘』やっと読み終わった。会社の始業前と昼休みに毎日ちょっとずつ読んでたんだけどそのたびに気が滅入った。夫の浮気が原因で発狂した妻と、その妻と抱き合いながらぬかるみの中を滑り落ちていくようにして自身も狂っていく夫の話。 (今週のお題「最…

J.D.サリンジャー著/村上春樹訳『キャッチャー・イン・ザ・ライ』読んだ

前々から名前は知っていて気になっていた。ようやく読めた。 海外文学って「有名で気になっているが読んだことがない本」が多い。モモとか長くつ下のピッピとか、実は読んだことがない。星の王子様は高校生のときに初めて読んだんだけど「これは小中学生のこ…

大須賀めぐみ『マチネとソワレ』と、江戸川乱歩『孤島の鬼』

『マチネとソワレ』っていう演劇をテーマにした漫画が面白くて好きなんですけど、その中で出てきた江戸川乱歩原作『孤島の鬼』の作中劇(使い方あってる?)がドドドド好みで「ありがとう!!!!!!!!」っつって絶叫しながら読んだ。 『マチネとソワレ』は…

トルストイ「クロイツェル・ソナタ」読んだ

トルストイを読んだのはこれが初めてだったがなかなか面白かった。 イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ (光文社古典新訳文庫) [ レフ・ニコラエヴィチ・トルストイ ]価格: 770 円楽天で詳細を見る 「イワン・イリイチの死」目当てで読んだけど「…

夏目漱石『それから』読んだ / 転職活動で疲れている

漱石の『それから』読んだんですけど漱石の本によく出てくる高等遊民?なんなんですか?羨ましいですね。私だって本当はこんな風に生きてみたいがなぜかせっせと履歴書を書いて笑顔を作りパソコンのモニターに向かって「ありがとうございます!」と言いなが…

『伊曾保物語』と「counting sheep」の関わり

「眠れないときには羊を数えればよい」みたいな言い伝え(?)ってありますよね。 この前『伊曾保物語』の「いそほ帝王に答ふる物がたりの事」という話を読む機会があったんですけど、そこで「睡眠」と「羊を数えること」が関連して語られており、「眠るときに…

“家族”を持てない人間に対する救済の物語 清水玲子『秘密―トップ・シークレット―』

最強のラブストーリーが、ここにあります。 秘密(1) トップ・シークレット (ジェッツコミックス) [ 清水玲子(漫画家) ]価格: 743 円楽天で詳細を見る 時は2060年の日本……「科学警察研究所 法医第九研究室」・通称「第九」ではMRI捜査というものが行わ…

上野千鶴子・小倉千加子・富岡多惠子『男流文学論』(2)――吉行淳之介『砂の上の植物群』

(1)はこちら。 吉行淳之介『砂の上の植物群』を読みました。 吉行淳之介の小説を読んだのはこれが初めてです。 砂の上の植物群(新潮文庫)【電子書籍】[ 吉行淳之介 ]価格: 539 円楽天で詳細を見る 『砂の上の植物群』では、亡き父の影に囚われている三十七…