まくら

読んだ本や好きな文章の感想

「THE FIRST SLAM DUNK」観た

観た。

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私の周りで観た人みんなめっちゃ良かった〜って言ってたし私は基本的に原作至上主義者なので私の中の期待値かなり上がってたんですが、それをきれいに超えてきてくれました。ありがとう。

 

以下、ネタバレへの配慮ありません。未視聴でこれから観る予定の人は読まないことをおすすめします。

原作の話もします。

 

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観たあとの余韻エグすぎて映画館の下の階の日用品売り場で呆然と風呂用品眺めてたんだけど何にあんなに感動したんだろう。

 

この映画は(確か)原作で一番掘り下げが少なかった宮城リョータを主人公にしておりその過去と現在を描くものだったんですけど、原作では割とお調子者?お気楽系?で私の中では桜木と並ぶムードメーカーのような印象だったリョータにこんな激重過去があったのかよという点でまず驚いた。

 

「(主に)宮城リョータの過去」と原作最後の試合である「山王戦」が交互に描かれる、つまり原作既読派にとっての新情報(リョータの過去)と既知の情報(山王戦)が交互に出される構成になっていたんですね。

この構成がね、「原作との出会い直し」をもたらしていたんですよ…………

 

何度も読んで試合展開も完全に知っている山王戦、その合間合間に新情報が出されることで知り尽くしていたはずの原作の奥行きがさらに深まっていく。

これだけ広く読まれておりレジェンド化している作品を今になって映画化するのってすごく難しいことだったんじゃないかと思うんですけど、このつくりは大成功だったんじゃないでしょうか。

山王の試合運びが原作に忠実で、妙なオリジナリティ出してこなかったのもいいね。ただ私が最後に原作読んだの10年くらい前なのでもしかしたら細かいところは結構違ってるのかもしれませんが……

 

リョータの過去はまあ筋だけで言えばスポーツ漫画で何回も見たことのある定番の悲劇だったんですけど、母親にめちゃくちゃ感情移入してしまって辛かった。

死んだ兄を忘れたいのに忘れさせてくれない弟、どっちも同じぐらい大事なのに失った悲しみが大きすぎて目の前に生きている一人を大事にできない。一人になって自己嫌悪。夫が死んで息子が死に、その死のせいで家庭がヒビだらけになり、そして壊れかけた家庭が遠因となってもう一人の息子も事故を起こしあわや死ぬところだった。亡き兄と同じ背番号を背負う弟、応援してやりたいけどどうしても兄の姿を重ねてしまう。もう、母、これはめちゃくちゃになってしまうよ……

 

個人的に本当にキツかったのが、リョータが母親に宛てて書いた手紙。握り潰して出さなかった方の。

宮城リョータ……お前……マジですか?お前実は原作の間中そういう気持ちを抱えて生活してたの?嘘だろ?助けてください。

完全な「原作との出会い直し」を経験しました。

 

 

 

そんで、宮城リョータ以外もめちゃくちゃ良かったんですよ。

まずは三井。三井が最初に出てきてめちゃくちゃ動いてたの見たとき

「えっ………ウソ………めちゃくちゃカッコイイ……………………………❓❓❓❓」になった。

原作読んでたときは流川が一番かっこいいと思ってたんだけど映画ではマジで三井が一番カッコよく見えた。

 

「おうオレは三井 あきらめの悪い男…」

↑私このセリフ原作で一番好きかも。

ただこのセリフ、映画ではカットされており残念だった。その代わりに「この音が……  オレを蘇らせる  何度でもよ」はあってよかった。

 

マジで私さ……スポーツ漫画で選手がボールを放った瞬間スローモーションになり、音も消え、美しい弧を描いてボールがあるべきところに収まっていく演出、大好きなんですよ。美しすぎませんか?

簡単にやってのけてるように素人目には見えてしまうけどその技術を体得できるまでに何百回何千回と練習したはずで、その成果を試合で発揮しているというのに大感動してしまう。ハイキューで影山のセット見たときもそうだった。

 

 

あと桜木。桜木ね〜〜〜〜〜〜!!!!自チームにいてほしい男ランキング一位かも。おお振り読んだときは「田島❤️」って思うしハイキュー読んだときは「田中‼」って思うけどやっぱり桜木かも。桜木みたいなプレーヤーがチームを強くする。

マジ桜木のさ〜〜 山王戦だしリョータメインだしで桜木の過去がどれだけ描かれるかソワソワしてたけど、バスケを始めたときのことも触れられててよかった。

ウソから始まったバスケットボールを本当に「大好き」になるまでの物語。アツすぎる…………………………………………………

 

桜木の最後のシュートがダンクじゃなかったのが本当に“良い”んですよね。原作初読だったときは、タイトルで「SLAM DUNK」っつってんだからそりゃラストはド派手なダンクなんやろなぁ…って思ってたから読んだとき驚いた。

ダンクは桜木がバスケット選手じゃなかった頃からできたけど、ジャンプシュートは桜木が練習と努力で勝ち取ったものだから………。最後のジャンプシュートは桜木が「バスケット選手」になったことの完璧な証明です。

 

 

リョータの過去について語ったあとに他メンバーの過去(既知情報)を出してきたっていう順番も良かった。このへんあんまりうまく説明できないんだけど、そこに至ったときにはもう映画は完全なる新作であると捉えていたから、知ってたはずの過去が出てきても「そう;;;;;;;;;そうなんだよな;;;;;;;;;;;;;」ってなって新鮮に大感動した。こんなの、湘北メンバー全員ひっくるめて「大好き」にならざるを得ない。

試合終わりの方で湘北のベンチメンバーが「俺、このチームに入ってよかった……」みたいなこと言うんだけど、完全に観客の心理を代弁していた。我々はベンチメンバーだった。

 

 

 

なんで私ってこんなにスポーツ漫画のこと好きなんだろう。

すべてのスポーツ漫画で不良がスポーツに目覚めてほしいし、小柄な選手が活躍してほしいし、ジャイアントキリングしてほしい。敗北、挫折、仲間、成長、勝利、いつも素直に大感動する。

 

スポーツとか運動部って実際やるとなると金かかるし時間取られるし体いてーし金かかるし朝はえーし遠征地遠いし人間関係難しいし下手でもつらいし教える側になってもつらいし、本当に大変だよね。つらい苦しい早くやめたいと思っているのに、なぜか心身ともにボロボロになりながらコミットしてしまう。現実は漫画みたいにただアツく、ただ美しいものではないとわかっている。

しかし、だからこそ、スポーツ漫画という理想郷にめちゃくちゃ夢を見て大感動してしまうんだよなぁ………

 

 

映画の話に終わるけど、原作には描かれていないラストに普通に驚いた。宮城リョータさん、マジっすか。あと暗転したところでバッシュが床を踏む「キュッ……」って音だけを響かせたの、終わり方としてオシャレ過ぎて魂が震えた。

 

あとさ〜〜スラムダンクってシンプルに絵が好きだわ。うますぎる。どれだけ時代が下ろうが古臭くなることのないリアル志向の絵柄、かといって読んでいて疲れるほど描き込みが激しいわけではない、程よい引き算のなされた漫画的な絵柄。マジで好き。こういう絵にはガチで憧れる。

オープニングで出た漫画的線画(井上雄彦先生作?)の湘北メンバー、めちゃめちゃ良かった。「絵をたくさん並べて素早く切り替えたら動いてるように見えるんちゃうか?」って最初に考えついた人、マジの天才だろ。

 

映画館から外に出て、知らん街、曇天、冷たい風が吹いてたのも良かった。映画、バカみてーな青空ばっかじゃなくて描かれる空に曇天が多かったのも好きだった………空に存在感があってよかったです。ありがとう宮城リョータ、ありがとう井上雄彦先生、ありがとう映画スタッフ、ありがとうSLAM DUNK