まくら

読んだ本や好きな文章の感想

最近読んだものや観たものの感想

もろもろ感想。ネタバレ注意

 

 

森鴎外ヰタ・セクスアリス』(小説)

人間の性について知りたくて読んだ本その1

タイトルは「性欲的生活」の意で、主人公は森鴎外自身がモデルなんだと思われますが、鴎外自身の性癖や性生活なんかについて赤裸々に書いてあるというわけではなかった。なんなら大分ストイックなほうの人間だと思った。

でも発禁になったみたいですね。寄宿舎での男色事情や西洋寄宿舎でのオナニー事情についてはへ~となった。

わりにユーモラスな本でしたが、森鴎外は根がまじめな人なんだろうなあと文章読んでて思った。森鴎外で読んだことあるのは教科書に載ってるの(最後の一句高瀬舟舞姫)と山椒大夫ぐらいなんですが、やはり文体がまじめな人って感じですね、文章が硬いとか難しいとかいう意味ではなく。

 

 

 

谷崎潤一郎『陰翳礼讃』(評論?)

陰翳推しの人間による語りですね。現代文の問題に使いやすそうな文章。読みやすくてよかった。

いっしょに収録されていた「恋愛及び色情」でも言及されていた、「闇の中に沈む女」のあたりが興味深かった。

 

彼らに取っては、月が常に同じ月である如く、「女」も永遠にただ一人の「女」だったであろう。彼らは暗い中で、かすかなる声を聞き、衣の香を嗅ぎ、髪の毛に触れ、なまめかしい肌ざわりを手さぐりで感じ、しかも夜が明ければ何処かへ消えてしまうところのそれらのものを、女だと思っていたであろう。(「恋愛及び色情」)

 

平安時代あたりの女性観? 「闇の中の女」の概念、艶めかしくて好き。

 

 

 

河野多惠子『みいら採り猟奇譚』(小説)

 

人間の性について知りたくて読んだ本その2

マゾヒスト男性に嫁いだ妻がサディストに育てられていく話。

私はサディスト女がわりと性癖なので良かったです。夫の腕についた自分の噛み痕を見て「こんな酷いことになっちゃったわね」「痛かったら、舐めてもいいのよ」、夫に「殺しておくれ」と懇願されて「じゃあ、殺してほしい、ときちんとお願いしなさい」という妻、好(ハオ)……

 

愛の上に成立するサディズムマゾヒズムについてこれまであまり真剣に考えたことがなかった(というか、どういう心理なのかよくわからなかった)のですが、終盤のこの記述は「確かにな……」と思った。SMのありかたについての理解が深まった。

 

 人を逝かせることは、反復し得ないことではないのだった。しかし、逝かせてもらうことは、ただ一度しかできないことなのだった。しかも逝かせてくれる者が得られなければならないのだった。彼女の肉体か頭か心のどこかを、素早くその真理が横切る。一切ならず横切った。

「比奈子。――ね、比奈子」

 喘ぐ声が言う。「もう一度、馬に――いや、ペガサスにしておくれ」

 その一言で、人を逝かせることと、逝かせてもらうこととの相違の真理など、忽ち彼女とは無縁のものになった。彼の半ばと自分の半ばが、こちらと向うで共にいつまでも在るのだ(後略)

 

 

後ろに載っていた、作者と吉行淳之介との対談もありがたかった。正直この対談と解説とがなかったら大分本への理解度が低いまま終わっていたと思う。

 

河野 サディストは反復性が可能で、相手さえあれば、殺すことは幾度でもできますけど、マゾヒストの場合、殺してもらうのは一度しかあり得ない。それだけに欲望としては複雑だし、切実なんです。

殺してもらった直後の自分の恰好、殊に、相手がどんな顔をしているか、そこまで見届けたい夢がある。殺したほうは見ることはできます。殺された方は見られない。本当はそれを見たときに、マゾヒストの欲望が完成するわけなんですが。

 

サドよりマゾのほうが複雑で切実、というのはよくわかった。私は「殺されたい」という願望を抱いたことはないんですが、こういう「欲望」がやはり人の間で存在しているんですね(マゾの間でどれだけ一般的な欲望なのかはわかりませんが……)。

とても興味深い本でした。

 

 

 

富岡多恵子『波うつ土地』(小説)

 

人間の性について知りたくて読んだ本その3

 

『みいら採り猟奇譚』はあくまで性愛に内包される攻撃性(愛情の一形態)という感じだったんですが、『波うつ土地』の主人公「共子」から「大男」への攻撃性は……なんだろうな……少なくとも「愛」から来るものではないのはわかる。『みいら採り猟奇譚』に描かれているのがsexだったら、『波うつ土地』はややgenderな感じがする。

 

この作者の本あと何冊か読めばこの作者の価値観を理解・実感できるような気がするんですよね……なかなか興味深い考え方がちりばめられていたんですが「理解っ!!」とはまだ言えない……

でもとりあえず、この主人公の性的にアウトローな感じというか、確固たる価値観をもって自分の生き方を決めているような感じ、けっこう好きです。

 

 ヒトの性的充足感が、精神の、つまり愛の交感とやらとは切り離しえないかのごとくに信じこまれているとしたら、わたしは「ヒトでなし」ということになる。性交が終り「愛し」「愛される」男の腕の中で安らかにねむることで女の性的充足が完成するというのは、人生論という「テキスト」の流したデマだ。

 

セックスと愛をここまで明瞭に切り離してくれるのほんとありがたい

私は愛とセックスを切り離して描いてくれる作品を信頼しています

 

 

 男は、「人妻」との「情事」を欲していたのに、わたしは情事ではなく、たんに男と性交をしていたのであった。男は、最初の性交では興奮した。それは男にとってきわめて珍しい体験だからであった。しかし、妻以外の女との性交は、情事か売春であるとの迷信をもっていたから、たんに性交をする、というわたしの欲求に不安を感じたようだった。男は、女であるわたしが性器的欲求だけで男と性交しうるとは思っていないのだった。男が女の部分を求めうるのに比べて、女は男の全体をつねに求めているのだと、この男も思っていた。

 

なんかね……!何となくはわかるんですよ!!語の意味は理解できるんですが、その奥にある「核」のようなものをまだつかみきれない……多分この作者の価値観は私のそれと方向性が近いだろうという気はしているんですが、真に「理解(わか)る」感覚がまだやってこない……多分単に読み込みが足りないんだと思います。とりあえず、女の性欲を隠さないスタイルはとても好き。

後で理解したッ!!!と思うときがきたら、この辺の記述書き直すか新たに記事立てて書くかするかもしれません。

 

あとセックスのことを「交接」「発情して抱き合う」などと表現するのも、セックスを愛の象徴だとは微塵も思っていない感じが伝わってきて好感もてます。

 

 

ちなみに私は河野多惠子富岡多恵子もこれまで読んだことがなくて名前も知らなかったんですが、坪井秀人『性が語る』という本の中で紹介されていて知りました。

『性が語る』はメチャ分厚い本なんですが、こんな風に性について興味がある人にオススメです。

 

 

 

田村由美7SEEDS』(漫画)

 

知人から激推しされて読んだんですが大当たりでした、「他者を一つの人格として尊重し、愛すること」っていうのがどういうことなのか少しわかった気がする。これ読んでからしばらく「愛」ってなんなんだ?って自問自答してました。

私漫画での「満を持してのキスシーン」がかなり苦手で、両思いキスの気配を察知した瞬間読み流し奴になるんですが、マジで本当に私が読んできた漫画史上最強か…?と思われるキスシーンに出会えました。性愛からくる前戯としてのキス(延長線上にセックスが見えるキス)じゃなくて、「人格と人格の触れ合い」「精神と精神の抱擁」だった。原始的で神聖な愛だった。完全に完璧です

 

単純にストーリーがすごく面白いし、女の生理や出産(の汚さ)をきちんと描いているところに本当に好感を持てる。

ジャンルとしては多分サバイバル漫画なんですが、そういうサバイバル的状況になった初っ端で主人公の女の子が生理について心配してるのがリアリティあってよかった……。

あとレイプが完全に“暴力”として描かれていたのも信頼できる。レイプがちゃんと魂の殺人として描かれていたしレイプ加害者のその後の扱われ方や周囲の反応もなんというか「適切」だと思った……

 

知人から薦められたとき「サバイバルしてる少女漫画」って言われてウ〜ン……と思ったんですが、ライン漫画で無料だったので読んでみたところ面白すぎて読むの止まらなくなって翌日大人買いしました。確かにサバイバル少女漫画なんですがそういうラベリングやジャンル分けってやっぱりほとんど意味ねえな、実際読んでみて“そこ”に描いてあるモンが全てだよ、どんなに言葉を尽くして説明したとしてもそれはどこまでいっても中身とは別物なわけで、だから私はこのブログを読んだ人が一人でもブログで紹介した本に興味を持って実際読んでくれたらすごく嬉しいです(うまくまとめられなかった)

 

 

 

ジャルジャル単独ライブ「愛るしい、きみ」

お笑いライブ行くの初めてで一人参戦だったんですがメチャ楽しめました💃

何をどこまで書いても大丈夫なのかわからないので激浅感想になってしまうんですが、行ってよかった、絶対また行きたい

ジャルジャルのギスギス芸ほんとすき

死ぬまでに一度は腹殴る奴を生で見たい

 

 

 

久保帯人BLEACH 獄頣鳴鳴篇』(漫画)

 

BLEACH、やっぱりマジでカッコいい ほんとに 私の中の中二病的カッコよさを求める心を満たしてくれすぎる

 

獄頣鳴鳴篇、1ページ目から“格”の違いを見せつけられましたね。そうそうそう!!!コレコレ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!となった。BLEACHにしか満たせないものが確かにある。

やっぱり絵がウメェ〜〜〜〜(泣)キャラデザもコマ割りもセリフ回しもほんと好き、、、唯一無二、、、、

そもそも「獄頣鳴鳴篇」がカッコよすぎ  こんなオシャレな名前つけといて始まらないなんてことある?

 

そしてまさかのザエルアポロ・グランツ!?!?オイ!!!!好きだぞ!!!、!!!!マユリと再戦しろ!!!!!!!!

「あの瘦せこけた滅却師も居ない あの気狂い科学者も居ないとは 僕が狭隘なら侮辱と受け取るところだ」←こういうセリフ回しが大好き(泣)

これから獄頣鳴鳴篇で亡き隊長たちが出てくるのすっごく楽しみですね!!!😄卯ノ花隊長と浮舟隊長の卍解の能力がついに明かされるのかな!?あとルキアの反応からして志波海燕再登場ワンチャンある!?!?

私は夜一さんの斬魄刀についての情報をずっと待っています。

 

BLEACH大好きなので今度独立した記事にしたい。「1. 言語感覚(1-1ネーミング/1-2巻頭ポエム/1-3セリフ)」「2. リョナ」「3.典拠」で項目立てしてオタクの早口長文語りしたい。

 

 

 

呪術廻戦(映画)

 

0巻読んでから観たんですが、オイ!!!こんなシーンがあるなんて聞いてないんだが!?!?!?!?の連発でした。

いろんな意味で満足しました。冥さんに金払いたい。

終盤の五条悟の顔面が強すぎて一種の暴力だった。

 

あと呪術のファンブック読んだんですけど突然久保帯人が出てきて、、、そしてなぜかBLEACHについての新情報が得られて、、、、私が読んでたのってBLEACHのファンブックだったっけ?

芥見先生、ブリーチ好きなんだろうな〜とは思ってたけど想像以上にオタクだった。怒涛の早口長文で黒棺の詠唱破棄について語ってたの笑った。あと巻頭ポエムのこと「巻頭歌」って言い出したの芥見先生だったんですね。そしてあの、久保帯人先生、一番最後の絵……本当にありがとうございます……

 

 

 

中村文則『何もかも憂鬱な夜に』(小説)

高校生のときに初めて読んで以来何回読んだかもうわからないけどまた読んでまた泣いた、「泣いた」って感想は陳腐で情報もほとんど無いからあまり言いたくはないんだけどこの小説をどんなふうに形容していいのかわからない。

 

これまでいろんな本を読んできたが、「人生を変えられた」って言えるのはこの一冊だけかもしれない。

好きな作品はたくさんあるが、「既にもっている自分の価値観や嗜好によく合致しているもの」が“好きな”作品で、「自分がずっと答えを探していたある問いに対して、納得できる形の、もっと言えば無意識下で自分が望んでいた形の答えを提示してくれるもの」が“人生に刻み込まれる”・“今後の人生に影響を与える”作品なんじゃないだろうかと思った

この作品も独立した記事を作って語りたいがあまりに思い入れがデカいため自分の陳腐な言葉で語るのがはばかられる、でも書かないと人に伝えられない、ジレンマ 「思ってるだけじゃ伝わらないね」って私の中の米津玄師が言ってる。

 

中村文則『何もかも憂鬱な夜に』と小川洋子博士の愛した数式』は本当に私の中の二大バイブルで、こんな本がこの世に存在してくれているならこのぐちゃぐちゃな人生もなんとか生きていける気がする、守り神みたいな本です。これらについての私の思いを十全に語り得る言葉を私はまだもっていない気がするが、頑張ってこれらについてもそのうち書きたい。