まくら

読んだ本や好きな文章の感想

小説

4/4追記「見たこともないような美しく冷酷なものに、からめとられる」アンナ・カヴァン『氷』

タイトルの「見たこともないような美しく冷酷なものに、からめとられる」というのは、川上弘美さんによる解説の中にある言葉なのですが……言い得て妙。文庫版『氷』の帯にも使われているのですが、ずばりこの作品の異様さ、麻痺するような美しさ、残酷さが言…

中村文則『掏摸』

生活していく中でいろんなことが終わってきたなと思ったら中村文則の本を読みます。たいてい私よりも終わっている人が出てくるので。 いや~~~……中村文則、めちゃくちゃ好きなんですよ。割と私の中で当たりはずれがあるので軒並み全部好きというわけではな…

三島由紀夫のなんかよくわからんけどエッチな気がする短編小説「花火」

初めてこれ読んだときは「なんだ…?よくわからんな……」と思ったんですが、読み終わってからしばらくして「あの小説ってなんか……エッチじゃなかった!?!?」となりました。 それでこの前改めて読んでみたんですが、「……?いや別にエッチではないわ……考えす…

腐っていく苺のショートケーキ 小川洋子「洋菓子屋の午後」

小川洋子の本がとても好きです。著作は全てではないですがいろいろ読んでて、短編の中で一番好きなのはこの「洋菓子屋の午後」。文庫本のページにしてわずか15ページ。短編小説って物足りなく感じることが多くてそこまで好んで読まないんですが、「洋菓子屋…

かわいいだけのきみに殺人なんかできるわけがない――最果タヒ『星か獣になる季節』

今日はアイドルの動画を久々にじっくり見ていい気分なので、アイドルにまつわる本について。 星か獣になる季節 (ちくま文庫) 作者:最果 タヒ 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2018/02/07 メディア: 文庫 これ単行本でも読んだんですけど、紙媒体の小説で…

『雪国』の冒頭ぐらい有名になってほしい 夏目漱石『京に着ける夕』

とにかく「冒頭がハチャメチャにカッコいい!!!!!!!!!!!!!!」ってクソデカ大声で言いたい。 https://www.aozora.gr.jp/cards/000148/card777.html 汽車は流星の疾はやきに、二百里の春を貫つらぬいて、行くわれを七条しちじょうのプラットフォ…